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「死ぬ前に何が食べたいか」という、多くの人が一度は考えたことのあるその問いに対して、私は長いこと「これ」という答えをはっきり出せずにいました。

幼い頃から、他の何をさしおいてでも食べることだけは忘れない生来の食いしん坊だった私は、大人になるにつれて食べられるもの、おいしいと思うものがどんどん増えていき、その結果あらゆる食べ物を愛しすぎて、とてもじゃないけど一つになんて絞れないという状況に陥っていました。

ただ、実家を出て少しずつ料理をするようになったときから、もしかしたらこのおかずが先の問いに対する答えの有力候補かもしれないな、となんとなく思うようになっていきました。

それがこれ、小松菜と揚げの炒め煮です。

正直なところ地味だし、ガツンとしたパンチのある味わいがあるわけでもないし、学生の頃はどちらかというとそこまでテンションの上がらないおかずの一つ、のはずだったのに、料理をはじめてから今日まで一番作ってきたのが不思議なことにこの小松菜と揚げの炒め煮だったのです。

材料が小松菜と揚げの二種類しかなく手軽なこと、だし、醤油、みりんからなる定番の甘辛な味付けで飽きがこないなどの理由ももちろんありますが、何よりも、祖母が夕飯時にしょっちゅうどんぶりいっぱいに作ってくれていた記憶と密接な関係があるということが、今になってはっきりわかります。

私が死ぬ前に食べたいのは、正確にいうと「おばあちゃんの小松菜と揚げの炒め煮」だったのです。

祖母は栗原はるみさんの名著『ごちそうさまが、ききたくて。』のレシピを元にしていました。
料理をはじめてすぐに母から同著をプレゼントしてもらったので、私も祖母に教わることなくこのおかずを作ることが出来ましたが、祖母は長年作るうちに自己流のアレンジを重ねており、なかなか同じ味にはなりません。みりん、砂糖を減らして、かなりすっきり味にしていたり、小松菜より先に揚げを炒めたりしていた気がします。
…気がしますが、もう彼女のレシピの正解を確かめることは出来なくなってしまいました。

我が家で一番おしゃべりで気が強く、しっかり者できれい好き、記憶力がべらぼうに良かった祖母は、つい一週間前、突然天国に旅立ってしまいました。

確かにだんだんと足腰が弱って、以前の勝ち気さも影をひそめるようになってきていましたが、八十七まで大病を患うこともなく、亡くなる直前までハキハキとして、自分のことより孫である私の将来の心配や、私の着ている服や靴への手厳しいダメ出しを欠かさない、いつもの祖母でした。つい10日前にも祖母が愛した伊勢丹で買い物をして、妹と並んで一緒にお蕎麦を食べたばかりだったので、本当に驚きました。

あまりに急なことでまだ整理がついていないけれど、ひとまず家族でのお見送りを終え、久しぶりに実家から一人ぐらしの家に帰った瞬間、特に考えず作り始めていたのはやはりこのおかずなのでした。

厚揚げの代わりに油揚げを使っているし、味付けもその時々の気分だし、私のつくるのは、元のレシピともおばあちゃんの味とも全然違っています。そういう意味でも「おばあちゃんの」小松菜と揚げの炒め煮を食べたいという願いはもう叶わなくなってしまいましたが、なんとなく自分流に姿を変えながらも作り続けていきたい大切なおかずです。


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プロフィール

ユキコフスキー

Author:ユキコフスキー
'86年生まれの飲んだくれ。
食べ物に目がない割にスーパー不器用。実家を出たのをきっかけに「脱・食べる専門」をめざして料理をはじめ、数々の失敗を繰り返しています。

手ぬきで見ばえの良くないご飯ばかりですが、何かアドバイスをいただければ嬉しいです。
@222ka_yukikov

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